鹿肉のローストは、簡単に作れる(鹿さえ手に入れば)
鹿肉を知り合いにいただいた。
この知り合いはよく鹿や猪などのジビエ(おしゃれな言い方が普及してきたね)をくれる。ありがたい。
ちなみに立派なモモ肉である。これは美味しそうだぁ。
しかしここからが大変。
もちろん皮や血は綺麗に処理はされているけど、肉は大きなブロックのまま。
お坊さんがポクポクやってる木魚みたいな大きさだ。しかも重い。
うちの、ただでさえ冷凍食品でパンパンの冷凍庫には、とても木魚ひとつまるまるは入らないのだ。
切り分けるほかあるまい。
どんなお肉にも筋肉と筋肉の境目に筋がある。
また、一つのもも肉の中にもいくつかブロックがあり、それぞれが薄い筋膜で覆われている。それらがドッキングして、大きな木魚を形成しているのだ。
筋は硬い。普通に焼いたぐらいでは噛み切れない。
コトコト何時間も煮込まないととても食べられないので、
美味しい柔らかい部分とは切り離しておくのが重要だ。
おそらく牛すじもそんな感じで生まれているはず。
どちらかというと、ヒレとかローストとか、そういう「主役」に対する副産物的なものなのかもしれない。
でも自分はステーキよりすじこんの方が好きだな。
…などと考えつつ作業を進めた。
肉の解体歴は長くないので、未だにどこに筋があるのかよく分からない。
ここかな?と思えば、ない。
逆に、えっ、こんなところに?というときもある。
まさに手探り。
20分後。
研ぐのをサボって、包丁の切れ味が悪かったこともあり、ちょっとボロボロになってしまったところもあったが、なんとか終了。
お店で見るような肉のブロックが自らの手で生まれていくのはなかなか感慨深い。
鹿肉はローストにしようと決めていた。
綺麗で美味しそうなのをふた切れほどチョイス。
残りは冷凍庫にしまって、調理に取り掛かった。
肉調理の基本は、お肉を常温に戻すこと。
今回は切り分ける過程で冷たさが抜けていたので、すぐに取りかかれた。
嬉しい。
普段は冷凍したものをレンジ解凍して、というやり方。
しかしそれだと半凍りのままだったり、逆に温まりすぎてお肉の端っこが炊けてしまったりで、ちょうどいいところに来ないのだ。
(前の晩から冷蔵庫や冷凍庫から出しておけば、というのはよくわかるのだが、
自分が料理を作りたくなるのはなぜかいつも衝動的。急にやりたくなるので間に合わないのである)
材料はこちら
・鹿肉(今回は350g弱)
・塩 小さじ1弱
・胡椒 適当
・オリーブオイル 大さじ1くらい
ロースト自体の材料はこんなにシンプルです。
ソースに凝れば色々必要になると思うけど…。
(ちなみに今回のソースは、ブルーベリージャムと庭で5秒でもいできた無花果を使い、欧米風の甘酸っぱい系にしてみました。)
まず、大きめの鍋にお湯を2リットル沸かす。
お湯を沸かしてる間に、
ジップロックに鹿肉、塩、胡椒、オイルを入れてしっかりモミモミ。
お湯が沸いたら、火を止めてすぐに水500ccを入れる。
これはお湯の温度を少しだけ下げるため。
熱いままだとお肉が茹だりすぎる可能性がある。
お鍋にジップロックを、空気を抜きながら投入。
空気を抜くことで鍋にしっかり沈ませる。
蓋をして20分待つ。
時間になったら取り出して、表面をフライパンで焼く。
冷めるまで休ませて、出来上がり!
レシピによっては一晩お肉をマリネする、なんて時間のかかるやり方もあるのだが、これだとささっと作れてしまう。
急なお客様が来ることになったわ〜ってときも頑張ればできちゃう。素晴らしい。
火の通りを心配していたが、切り口は「これサンプルかい?」と思うほどの美しいロゼ。薄いピンク色。大成功だぜ!
甘酸っぱいソースをかけて食べる。
食感しっとり!柔らか!だけど生とは違う!ちゃんと火が通ってる!完璧やん!
これほど上手くできたのは初めてだった。嬉しい。
ただ…
これわさびと醤油で食べた方が美味しいんでは…?
悪魔の囁きが脳裏をよぎった。
なんでや!ワイはおしゃれなベリーソースをわざわざ作ったんや!
参考レシピも軒並みベリーソースだったし、そっちの方が鹿肉には美味しいはずや!
わさび醤油なんて…。
確認してやる!
結果、やはりというべきか、わさびと醤油の素晴らしさ、日本に生まれた喜びを噛みしめることになったのだった。
(今回のベリーソースは完全に自己流で作ったので、きちんとやれば多分もっと美味しく作れるはず。っていうかベリーソースの正解を知らないので、鹿肉のローストをちゃんと店で食べたい)